エーミングとは?導入前に知るべき基礎知識

「エーミングって本当に必要なの?」「導入にはどんな準備がいるの?」-そんな疑問をお持ちではありませんか?
近年、ASV(先進安全自動車)の普及により、
エーミングの重要性が急速に高まっています。
事故後の修理やガラス交換、さらには車検時にも、適切なエーミング作業は必須となっており、企業にとっても避けては通れない対応項目です。
本記事では、エーミングの基本から導入に必要な設備、資格、費用の目安までを網羅的に解説。エーミングを正しく理解し、事業に導入する際の判断材料としてぜひご活用ください。
エーミングとは
『エーミング(Aiming)』とは、自動車の先進運転支援システム(ADAS)に搭載されている各種センサーやカメラなどの電子制御装置を、正確な位置・角度に調整・校正する作業のことです。『キャリブレーション(Calibration)』と称されることもあります。
具体的には、フロントカメラやレーダー、ソナー、周辺監視システムなどが対象となり、これらが正しく機能するために、エーミング作業が欠かせません。
最近では、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストといったASV(先進安全自動車)の普及により、こうしたセンサー類が多数搭載されるようになり、整備事業者が車両整備を行う際にも、エーミングの実施が法的に義務づけられるケースが増えています。
エーミングの作業内容について
エーミングターゲットとは
エーミングターゲットとは、カメラやレーダーが正しく認識できるように設計された「基準となる標的」です。
車両前方に設置し、システムがターゲットを正しく検知できるかを確認しながら調整作業を行います。
メーカーや車種によって使用するターゲットの形状・サイズ・設置距離などが異なるため、対応には高い知識と経験が求められます。
エーミングに必要な工具
エーミングには以下のような専用ツールが必要です。
- ターゲットボード(標的板)
- レーザーレベルや測定器
- 専用診断機(スキャンツール)
- リフターやジャッキ
これらの機器により、ミリ単位での精密な調整が可能になります。
導入コストは決して安くありませんが、誤った調整は事故や訴訟リスクにも繋がるため、信頼性の高いツールの導入が不可欠です。
エーミングに必要な作業環境
正確なエーミングを行うためには、以下のような作業環境が求められます。
- 水平で障害物のない作業スペース
- 一定の照明条件
- ターゲット設置距離を確保できる空間(5〜7m以上が一般的)
特に誤差に敏感なミリ波レーダーの調整には、わずかな傾斜や反射物が誤認識の原因になるため、適切な作業環境が整っていないと正確なエーミングができません。
エーミングの資格について
2020年の特定整備制度施行により、エーミング作業は「電子制御装置整備」に該当し、認証を受けた事業者と有資格者のもとでしか実施できなくなりました。
必要な資格には以下があります。
- 整備主任者等資格取得講習(電子制御装置整備)
- 実務講習(エーミング講習)
- 記録簿の作成ができる者の配置
企業で内製化を検討する際には、技術者の資格取得支援と記録管理体制の整備が重要です。
エーミングの修正・調整方法について
エーミングの調整作業には、**静的エーミング(停止状態で行う)と動的エーミング(走行しながら調整)**の2種類があります。
主な修正・調整の流れは以下の通りです。
- センサー部位の取り付け・交換
- スキャンツールでの診断
- ターゲットを設置し、所定位置に調整
- 校正データを登録・記録
正確な診断機とマニュアルに基づく手順を守ることが、作業品質を保つポイントです。
エーミングと車検について
エーミングは一部のケースで車検の合否に直結する重要項目です。
具体的には、フロントカメラやセンサーのズレがあるままでは先進安全機能が正常に作動しないと判断され、不適合とされることがあります。
特に、以下の作業後にはエーミングが必須となることが多いため、車検業務とセットで実施する整備工場も増えています。
- フロントガラス交換
- バンパー交換
- レーダー/カメラ脱着
ASV(先進安全自動車)車両とは
ASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)とは、運転者の安全をサポートするために最新の電子制御技術を搭載した車両のことです。
これらの車両には、カメラやミリ波レーダー、超音波センサーなどが多数搭載されており、運転支援システム(ADAS)が常に稼働しています。
このような機能を正しく作動させるために欠かせないのが「エーミング作業」です。
ASVの高度化に伴い、整備業者側もエーミングスキルの習得と、対応できる設備環境の構築が求められるようになりました。
衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
AEBは、前方車両や障害物を検知し、自動でブレーキを作動させることで衝突を回避・軽減する機能です。
この機能にはフロントカメラやミリ波レーダーが必要で、ズレや誤作動を防ぐためにも正確なエーミングが必須です。
レーンキープアシスト(LKAS)
LKASは、車線からの逸脱を感知し、ステアリング操作を補助する機能です。
主にフロントガラス上部に設置されたカメラが使われており、ガラス交換やカメラ脱着時にはエーミングが必要になります。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)
ACCは、前走車との車間距離を自動で調整しながら一定の速度で走行を維持する機能です。
レーダーセンサーの位置ズレがあると、誤った距離認識による加減速や追突リスクが生じるため、正確なエーミングが重要です。
ブラインドスポットモニター(BSM)
BSMは、後方や側面の死角をモニタリングし、車線変更時の安全を確保するシステムです。
リアバンパー内部のセンサーが使われるため、事故や修理で脱着があった際には再調整が必須となります。
リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)
RCTAは、駐車場などで後退する際に左右から接近する車両や歩行者を検知し、警告を発する機能です。
このシステムもBSMと同様にリアセンサーに依存しており、正確なセンサー位置が命となる機能のひとつです。
フロント・サイド・ブラインドスポットモニター(FSM)
FSMは、見通しの悪い場所を走行する際に左右から接近する車両や歩行者を検知し、警告を発したり、自動に停止する機能です。
このシステムもセンサーに依存しており、正確なセンサー位置が命となる機能のひとつです。
インテリジェント・クリアランス・ソナー(ICS)
ICSは、駐車場などで前進・後退する際に接近する障害物を検知し、警告で危険を促したり自動的にブレーキがかかる機能です。
このシステムは、アクセルとブレーキの踏み間違い防止・更には上記システムと連携し自動的に駐車してくれるシステムです。
ソナーの多くはフロントバンパーやリアバンパーに取り付けられていますので、装備されている角度が重要になります。
オールアラウンド・ビュー・モニター(AVM)
AVMは、全方位カメラと称されることもあり、車両が前進・後退する際に周囲の障害物を検知し、警告で危険を促したり自動的にブレーキがかかる機能です。
このシステムは、アクセルとブレーキの踏み間違い防止・更には上記システムと連携し自動的に駐車してくれるシステムです。
カメラの多くは車両の前後左右に取り付けられています。そのため正確な取付位置が重要になります。
※上記システムは、車両メーカーによってシステム名称が違います。
エーミングが必要なケース
事故や修理後の再調整
以下のような作業が発生した場合、エーミングが必要となることがほとんどです。
- バンパーやフロントガラスの交換
- レーダー、カメラの脱着
- 足回りの整備
- 事故によるボディの変形修復
これらの作業後にエーミングを実施せず放置すると、先進安全装置の誤作動や機能停止、重大事故に繋がる可能性があります。
車検時における点検項目
国土交通省の通達により、車検整備時にADASの校正が必要な場合が明記されるようになりました。
特に以下のような兆候が見られる場合には、車検とセットでのエーミング作業が推奨されます。
- カメラやセンサーにエラーコードが表示される
- 警告灯が点灯している
- 運転支援機能が正常に作動しない
整備記録簿にもエーミングの実施有無を明記する必要があるため、記録管理の徹底が重要です。
エーミングについてよくある質問
Q. どの車種にエーミングが必要ですか?
トヨタ、ホンダ、日産など各メーカーのASV搭載車が対象です。特に2018年以降のモデルは要注意。
Q. エーミングしないとどうなる?
誤作動・機能停止・警告灯の点灯・事故リスクの増加といった深刻な影響があります。
Q. 料金の目安は?
一般的には1か所あたり15,000円~。車種や作業内容で変動します。
Q. 資格がなくてもできる?
法的にはNGです。特定整備認証と資格取得者の配置が義務付けられています。
Q. 導入には何が必要?
作業スペース、専用機器、認証申請、技術者教育の4点が主な準備項目です。
Q. 社外フロントガラスや、標準と比較して車高の変わった車両は?
メーカーが定めたエーミング作業環境に基づいて作業をしますので、社外ガラス・車高変更車輌はNGです。
まとめ
エーミングはもはや、先進安全自動車が主流となった今、整備業界における“新しい常識”です。
作業の精度は車両の安全性能を左右するため、設備投資と技術者育成を疎かにすることはできません。
本記事を通じて、導入前に必要な知識や準備すべき項目が明確になったのではないでしょうか?
貴社の整備体制にエーミング技術を加えることで、より安全で信頼される整備サービスの提供が可能となるはずです。